ある1匹の竜がいた。
彼は人同士の争いに利用され、彼もそれを疑う事は無かった。
だけども、何故か心には常に大きな底の見えない穴が開いていた。
ある日の戦場にて、
彼は美しい女性と出逢った。
彼女は勇敢で、また誰に対しても差別無く接していた。
それは竜に対しても例外ではなかった。
この人の偉大な愛なら大きな心の穴を埋めてくれる様な気がした。
しかし、
争いが激化し、こちらの陣営に危機が訪れると、
傷を負う事も無い場所にいる権力者達は、
敵から危険視されていた彼女を殺す事で、交渉を図ろうとした。
そして、彼女はもうどこにも居ない。
近くでガラスの割れる音がした。
大きな心の穴から紅く煮えたぎる何かが溢れ出た。
それは、彼の弱さを隠す様に全身を覆い、
醜い姿へと変え、
全てを焼き尽くした。
争いが終わり、
死臭蔓延る戦場にて、彼は、
踏まれ、散り散りになりながらも色褪せなかった花を必死に搔き集め、
愛を求めて、暗い道を進む。
醜い彼を愛してくれる者など、もうどこにも居ないのに。
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